tennis88’s blog

上海でテニスをしています。

セレナウィリアムズ選手について

先日の全米オープン2018の女子決勝では大きなドラマ?事件?が起きましたね。

セレナウィリアムズ選手を批判する人もメディアも多いですが、少なからず肩を持つ人もいますね。僕は、どちらかと言うと、セレナの味方をしてあげたい気持ちが大きいです。

 

最初に断っておきますが、今回セレナ選手の行為はチャンピオンとして、グランドスラムの決勝として、許される行為ではありません。

しかし、何故このようなことが起こったかの背景を理解してから、もう一度批判をするのかを決めていただきたいです。

 

僕は、試合を生中継では見れなかったので、後から録画されたものを見ました。

簡単に僕の意見をまとめますね。

 

1、コーチングについて

今回の、試合を動かす最初のポイントはセレナがコーチングを受けたか否かです。

審判はセレナがコーチからアドバイスを受けたとして第一回目のペナルティ(警告;ウォーニング)を取りました。

イギリス由来であるテニスは紳士淑女のスポーツと言われ、ラケットを折る、暴言を吐くなどの行為に加え、アドバイスを受けるなどのスポーツマンシップに反する行為には、罰則行があります。(罰則に当たる細かいルールはたくさんあります)

1度目は警告コーチングを受けたのはここに当たります

2度目は1ポイントを失い

3度目は1ゲームを失います。

 

それに対してセレナ選手はポイント間で審判台に行き、審判にこう言っています。

「コーチが私に対して親指を上げただけであって、あれはコーチングには値しない。」

そして「私はチートをして勝つなら、負けることを選ぶ」ともとても穏やかな口調で言い放ちました。

その後のチェンジコートのセレナ選手が座っている時にまた審判と会話しています。

会話の最後は

「i don't cheat」(前の会話を含めた上で)私は反則をする人ではない。

「i know that」(わかっているよ)

そしてお互い「thank you」で終わっています。

この時の会話もとても穏やかなものです。

 

ここで問題なのは、果たしてあれはコーチングとカウントするのかどうか。

先に書いておくと試合後の興奮した状態のセレナのコーチはこう答えています。

「実際のことをいうと私はコーチングをしていました。ただそれは全員のコーチがすることで私だけではなく他の選手のコーチもしている。」

インタビュワーが「あなたは今までにコーチングで罰則をとられたことがありますか?」との質問に、

「今まで一度もない。データを調べてもらえばわかる。」と答えています。

 

野球では監督がバッターに指示を送っていますね。

様々な手のサインがあり、チームで作戦を決めます。

それに対し、テニスでは「強気でいけ!」などの意味を込めて親指を上げて選手を応援するシーンはよく見られますが、これがコーチングになるのかどうかの明確な基準はまずありません。

そもそも複雑なテニスの勝ち方の中で、野球の「一球をどこに打ち返すのか」のアドバイスと違い、数十メートル離れたところから的確なアドバイスができるとも思えません。

テニスのコーチングの罰則は、グランドスラムの舞台ではなく、プロの下部の大会や、ジュニアの試合など、親やコーチが選手のいるフェンスの真後ろにいる時に選手と会話をしたときなどにメインで取られているものであり、何十メートルも先にいるコーチのジェスチャーコーチングにみなされることは、ほぼありません。

 

海外の選手が大切な場面でミスをしたときに自分のコーチの方に向かって両手を広げて、「何故だー!」というようなジェスチャーを行い、コーチがうんうん。大丈夫さ!と頷く。こんなシーンはいくらでもあります。

 

2、ラケットを折ったことについて

これは罰則です。これは言い訳のできない反則行為です。

ここで問題になっているのは、この行為が、

1度目は警告

2度目は1ポイントを失いここに該当するかどうか

3度目は1ゲームを失います。

 

先ほど説明した穏やかな会話の中でレフェリーは最後に

「i know」と言い、セレナがチートするような選手ではないということを認めています。

しかしここで審判はセレナにポイントペナルティ、つまり二つ目の反則行為とカウントしたわけです。

 

これに対して、セレナは

「i didn't get coaching, you need to make a anouncement that i didn't get coaching.」

(私はコーチングを受けていない。あなたは私が先ほどコーチングを受けていないことをアナウンスしなくてはいけない)と主張しています。

ここまでは、穏やかな口調でしたが、主張を変えないレフェリーに対して、徐々にフラストレーションが溜まり、

「you own me an aporogy! i have naver cheated in mylife!」

(あなたは私に謝罪しなくてはいけない、私は今まで一度もチートをしたことはない!)と主張しています。

 

3、「you are a thief!」は審判を侮辱したことになるのか

 

ゲームが終わり、次のチェンジコートの時に

「you stole a point from me. you are a thief too」

(あなたは私から1ポイントを奪った、あなたは泥棒でもある)

(ここで「too」「でもある」なのは、その前にセレナがあなたは「ライヤー」だと言っているからです。)

 

この言葉が3回目の違反にあたり、セレナはゲームペナルティを受けました。

テニスの試合で1ゲームの罰がいかに大きいものかは、みなさんわかりますよね。

 

この言葉が新聞記事やネットニュースで使われていますね。

ネットの記事は、閲覧者数を増やすために背景を伝えずに「泥棒」という言葉を全面的に使いセレナが理由もなく一方的に怒り狂ったような書き方が多いのがとても気になります。」

この後セレナはスーパーバイザーを呼び更に抗議を続けています。

 

さて、前置きが長くなりましたが、

セレナが「泥棒」という言葉を使ったのは「アンフェアなジャッジでポイントを審判に取られたから」という意味があります。

その前に「ライヤー」(嘘つき)といったときには罰則は取られませんでしたが、「泥棒」という言葉を使った後に罰則を受けました。

テニスの審判や観客、対戦選手に向かって放った言葉で罰則が出る場合一般的には

Fワードと呼ばれる汚い言葉や、人種差別的な言葉、相手の社会的立場を下げるような言葉などです。

今回の言葉を何の前触れもなく使ったのなら罰則をもらう可能性はありますが、あくまでも理由があって言った言葉で罰則を出したのは驚きです。

 

4、男女差別はあるのか

次にメディアが注目しているところはここでしょう。

何故、これが注目されるのかといえば、

セレナが、

「this is not right, this is not fare, this is happing to me too many time. There are men out here that do a lot worse, but because I’m a woman, because I’m a woman you’re going to take this away from me?」

(このようなことは私に対して何度も起き過ぎている。多くの男子選手が私よりもっとひどいこと行いをしてる。私が女性だからこのような仕打ちを受けるのか)

とコート上で審判に向かって言ったからです。

 

実際に多くのコメンテーターがセレナの肩を持っています。

「男子選手は10倍ひどいことを言ってもペナルティを受けない」

「男子選手は何を言っても許されている現状はある」

とのコメントもあります。

 

逆に、

「セレナの主張は一部正しいが、それでもあのような行為は許されるべきではない。」とのコメントが最も多いです。

 

僕の意見は、こちらと同じで許されるべきではないと思います。

しかし、弁解の余地がまったくないわけでもないでしょう。

 

 

この事件に対し、

どうやら、アメリカ人と日本人のコメントがかなり割れているようです。

 

アメリカでは、

彼女の主張もわかる。女性差別の問題があるかもしれない。などに対し、

 

日本では、

どんなことがあろうと審判に口答えをするのはいけない。という意見もあるし、

「日本人がグランドスラムの決勝に言ってるからテニスのことはよくわからないけど見たらなんか大問題になってる、相手の選手はラケットも折るし、審判に怒ってるし(英語わからないけど)、ありえないだろ!」みたいな人も多い。

「スポーツに人種差別とか女性差別を持ち込むな!」っていう意見も多いので、人権やスポーツに対する価値観はまだまだ違うんだと思う。

 

これは、

「どんなことが起きても上の人(先輩や上司)には逆らってはいけない。」

「スポーツで個性を出すことは悪いことである」

という日本の古くからある考え方に少し由来している気もしました。

 

海外だと、あくまでも、ひとりの人間としての行動を重視する国が多いので、そもそも考え方は違うのは、当たり前ですが。

 

僕は、スポーツで人が感動するのは、ロボットがプレーしているのを見るのではなく、生身の感情を持った人間同士で闘い、その人の人生をかけて、ドラマが生まれることで心が動くからだと思います。

その選手に今まで何が起きたのかを知らずに、一部を切り取って「常識的にこれはダメだろう」という批判は、少し悲しい気持ちもしますね。

 

しかし、テニスは、テニスをしている人だけのものではありません。

これまでテニスに興味がなかった人たちや、テニスを知らない人にもテニスを好きになってもらう必要があります。

知識のある人が、身内だけしかわからない理由で大衆が許せないと思っている行為を許すのは、いけないことなのでしょう。

 

セレナ選手は、自分のしたことを見つめ直し、そしてもっと大きい選手としてまた帰ってきてほしいですね!

グランドスラム最多優勝記録を持ち、子供を出産してまたコートに帰ってきた素晴らしい選手です。

この苦難を乗り越えてくれることを祈っています。